金屑かなくず)” の例文
私の小さいブランコのつるしてあった、その無花果の木の或る枝の変にくねった枝ぶりだとか、あるときの庭土のかおりだとか、或いはまた金屑かなくずのにおいだとか
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
国の土蔵の一つに、がらくた道具ばかり這入はいっているのがある。何に使ったものか、見慣れない器、け損じて何の片割れとも知れない金屑かなくずや木の切れがある。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
かの女は「闇中あんちゅう金屑かなくずを踏む」といふ東洋の哲人の綺麗きれいな詩句を思ひ出し、秘密で高踏的な気持ちで、粒々の花のまきものを踏み越した。そして葉の緻密ちみつ紫葳のうぜんかずらのアーチを抜けた。
夏の夜の夢 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)