野干やかん)” の例文
大法を保任し真髄を得たものは、それが露柱ろしゅ灯籠とうろう、諸仏、野干やかん、鬼神、男、女、貴族、賤民、の何であろうとも、礼拝すべき貴さを担っている。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
と叫んだのだ——來て寢よは、來つ寢よなので、この夫どののことばによつて岐都禰きつねといふとある。そこで、この野干やかんの生んだ子を岐都禰きつねといふ名にし、姓を狐のあたひとした。
春宵戯語 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
神前にて腹十文字にきり、はらわたをくり出し、悪血をもって神柱かんばしらをことごとく朱にそめ、悪霊になりて未来永劫えいごう、当社の庭を草野となし、野干やかんねぐらとなすべし——うんぬん。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「この野干やかん、またふざけやがって」
馬の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
犬に追はれた家室さんは忽ち野干やかんとなつてまがきの上に乘つてゐる。紅染くれなゐぞめのを着て、裳裾もすそをひいて遊んでゐる妻の容姿すがたは、狐といへど窈窕ようちようとしてゐたので、夫は去りゆく妻を戀ひしたつて
春宵戯語 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)