野合やごう)” の例文
「いや、おそらくは、御主君には、ほかに深いお考えあってのことだろう。何条なんじょう易々いいとして、信雄卿と秀吉の野合やごうを御承諾あるものか」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男女教員の風儀だとか吝嗇りんしょくとか不勤勉ということが村人の眼にあまるのである。ところがそういう村人は森の小獣と同じように野合やごうにふけっているのである。
禅僧 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
今日の小説や詩や歌のほとんどすべてが女郎買じょろうがい、淫売買、ないし野合やごう姦通かんつうの記録であるのはけっして偶然ではない。しかも我々の父兄にはこれを攻撃する権利はないのである。
恋とはただ一つの魂をはげしくもひそかに呼び合うことだ。僕はそう信ずる。あのちまたにあれすさんでいる火遊びの嵐はどうだ。あんなものは何が恋だ。あんなものは不潔な野合やごうだ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
人のいやがる小説家と世の卑しむ妓女ぎじょとの野合やごう、事々しく通知致されなば親類の奥様や御嬢様方かへつて御迷惑なるべしと察したればなり。然れども世は情知らぬ人のみにはあらず。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
だから、正しい恋愛でもなければ、野合やごうですらない。暴力と権力で、ひとの妻を、奪ったものだ。それをおれが、また奪うのは、不義ではない。不死人は、そう傲語して、はばからないのである。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)