)” の例文
額をふせて無言だった。——それには道の中ほどに、大きな榎の木あって逞しい枝を張り、暗くしッとりと日のいろを……空のいろをいていた。——その下に古く易者が住んでいた。
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
ただ森々たる山気を通してどうどうと流れる木曽川の水が岩にかれてむせぶばかり。他には何んの物音もない。その陰々たる山懐中ふところで追いつ追われつ男女ふたりの者が、懸命に争っているのであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)