通過とおりすぎ)” の例文
何でも私に目認みとめられまいと思う様に本統ほんとうに憎いじゃ有ませんか廊下の燈明あかりが充分で無いのを幸いちょい/\と早足に通過とおりすぎました
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
近処の犬だの、箱屋はこやだの、出前持だの、芸者などが、絶え間なく通過とおりすぎるので、二人は立談たちばなしもそこそこに右と左へわかれた。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
どなたもそうさっさとお通過とおりすぎなさいますな。
種田は通過とおりすぎる道の両側を眺めている中、自動車は早くも秋葉神社の前に来た。すみ子は戸の引手を動しながら
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
そのへんにはカッフェーを出た酔客がまだうろうろ徘徊はいかいしているので、これを避けるため、少し歩きながら、通過とおりすぎる円タクを呼止め、値切る上にも賃銭を値切り倒して
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「一度お伺いしなくっちゃわるいと思っていたんですけど、ついお処がわからなかったもんで……。」と女はあたりを見廻し停留場にも人影がなく通過とおりすぎえんタクもちょっと途絶とだえているのを幸い
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)