返辞いら)” の例文
旧字:返辭
「は」と返辞いらえて老僕は、襖を立てて立ち去ったが、人品骨柄いとも凛々しい、浪人姿の武士を一人案内しつつ帰って来た。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「心得申した」——と返辞いらえながら、土器や三方さんぼうを手に取ると、焚き連らねられた篝火を目掛けパッパッパッと投げつけた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「それがよろしゅうござりましょう」山尾は軽く返辞いらえながら、云われるままに常陸と一緒に本堂の縁へ腰をかけた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すると遥かの奥の方から「オー」と返辞いらえる声がしたが、それから小刻みの足音がして、やがて一人の小男が手燭を捧げて現われた。小気味の悪い傴僂せむし男である。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
信玄の言葉に「はっ」と返辞いらえて膝を進めたのは庄三郎であった。珍らしく今日は出仕して、真田源五郎、三枝さえぐさ宗二、曽根孫二郎というような日頃仲のいい同僚と共に座中の斡旋をしていたのである。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「はっ」と返辞いらえて進み出たのは近習頭白須賀源兵衛であった。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)