轢死人れきしにん)” の例文
吉さんは人の見得ないものを見る。汽車の轢死人れきしにんがあった処を吉さんが通ると、青い顔の男女なんにょがふら/\いて来て仕方しかたがないそうだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
まるで轢死人れきしにんの両断した胴中の切れ目と切れ目の間を臓腑がねじれ会いながら橋渡しをしているとでもいいたいほど不様ぶざまな橋の有様だった。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そうして丁度人間の轢死人れきしにんの様に、人形の首、胴、手足とばらばらになって、昨日に変る醜いむくろをさらしているのを見ますと、私はやっと胸をさすることが出来たのでございます。
人でなしの恋 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
轢死人れきしにんがあつたんか知らん」と、女装の男は云つた。——
釜ヶ崎 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
轢死人れきしにんだな」
暴風雨に終わった一日 (新字新仮名) / 松本泰(著)
機関車の大車輪に轢死人れきしにんの血みどろの肉片がねばりついて、洗っても洗っても放れなかった話、ひき殺されてバラバラになった五体が、手は手、足は足で、苦しそうにヒョイヒョイおどり狂っていた話
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
値段は百十五万円であるから、普通以上のよい値段であった。その代りに私は八千五百円を投じて割安な轢死人れきしにんの両腕を譲りうけ、それを移植して頂いた。で、手取りが百十四万千五百円也となった。
大脳手術 (新字新仮名) / 海野十三(著)