轎夫かごかき)” の例文
それにしても、轎夫かごかきもいなければともの者もいない。まるで投げててでもあるように置いてあるのが不思議でならなかった。
棄轎 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
女は身づくろいもそこそこ礼をくり返してかごのうちへ入る。轎夫かごかきも九死に一生をえた思い。肩を入れるやいな、飛ぶが如く山をくだって行く——。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
轎 一人乗りで二人の轎夫かごかきが棒で肩に担いで運ぶもの。十七八世紀にヨーロッパの諸都市で流行した。
と、小さな旋風つむじかぜが起ってそれがうっすりとちりを巻きながら、轎夫かごかきの頭の上に巻きあがって青いすだれたれを横に吹いた。簾は鳥の飛びたつようにひらひらとあがった。艶麗えんれいな顔をした夫人が坐っていた。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)