輓歌ばんか)” の例文
姫の長き髮はこれをり、その身には生きながら凶衣を被らしめ、輓歌ばんかを歌ひ鯨音かねを鳴し、かたの如く假にはうむりて、さて天に許嫁いひなづけせる人となりて蘇生せしむ。是れ式のあらましなり。
汽船の凱歌がいかは帆船にとっては輓歌ばんかであった。
黒船前後 (新字新仮名) / 服部之総(著)
僧等は幾かさねの美しき衣を脱がせて、姫をひつぎの上に臥させまつり、下に白ききれを覆ひ、上に又髑髏どくろ文樣もんやうある黒き布を重ねたり。忽ち鐘の音聞えて、僧等の口は一齊に輓歌ばんかを唱へ出しつ。
友の群は劇場の舞群ホロスの如くこれに和せり。まことに此歌は其辭卑猥にして其こゝろ放縱なり。さるを我はこれを聞きて輓歌ばんかを聞く思ひをなせり。老は至らんとす。少壯の火は消えなんとす。