ちょう)” の例文
或夜、荘公は渾良夫に向って、さきの衛侯ちょうが出奔に際し累代の国の宝器をすっかり持去ったことを語り、如何いかにして取戻すべきかを計った。
盈虚 (新字新仮名) / 中島敦(著)
噂によれば、太子のいない衛国では、むを得ず蒯聵かいがいの子・ちょうを立てて、位に即かせたという。国を出奔する時後に残して来た男の児である。
盈虚 (新字新仮名) / 中島敦(著)
伯姫から云えば、現衛侯ちょうおい、位を窺う前太子は弟で、親しさに変りはないはずだが、愛憎あいぞうと利慾との複雑な経緯けいいがあって、妙に弟のためばかりを計ろうとする。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
最早(かつては愛らしかった)おのれの息子のちょうは存在しない。おのれの当然嗣ぐべき位を奪った・そして執拗に己の入国を拒否する・貪慾な憎むべき・若い衛侯が在るだけである。
盈虚 (新字新仮名) / 中島敦(著)
続いて霊公の子・太子蒯聵かいがいも義母南子をそうとして失敗し晋にはしる。太子欠位の中に霊公がしゅっする。やむをえず亡命太子の子の幼いちょうを立てて後をがせる。出公しゅつこうがこれである。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)