越中境えっちゅうざかい)” の例文
山岡大夫はしばらく岸に沿うて南へ、越中境えっちゅうざかいの方角へいで行く。もやは見る見る消えて、波が日にかがやく。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
われ御曹子おんぞうしならねども、この夏休みには牛首を徒歩かちあるきして、菅笠すげがさを敷いて対面しょう、とも考えたが、ああ、しばらく、この栗殻の峠には、われぬ可懐なつかし思出おもいでがあったので、越中境えっちゅうざかいへ足を向けた。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)