赤熱しゃくねつ)” の例文
赤熱しゃくねつの鉄砂が蛍のように飛び散ると、荘厳そうごん神のごときおももちの孫六が、延べがねを眼前にかざして刃筋をにらむ……。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
あのボオドレエルの詩の中にあるような赤熱しゃくねつの色に燃えてしかも凍り果てるという太陽は、必ずしも北極の果を想像しないまでも、巴里の町を歩いていてよく見らるるものであった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ぬらぬら濡れている岩の上を踏みぬめらかし踏みすべり、まっくろぐろの四足獣、のどに赤熱しゃくねつ鉄火箸かなひばしを、五寸も六寸も突き通され、やがて、その鬼の鉄棒は胸に到り、腹にいたり、そのころには
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
あの赤熱しゃくねつの色に燃えてしかも凍り果てる北極の太陽に自己おのれ心胸こころたとえ歌った仏蘭西フランスの詩人ですら、決してただふくろうのように眼ばかり光らせて孤独と悲痛の底に震えてはいなかったことを想像し
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)