谷村やむら)” の例文
一人のみすぼらしい旅人が、甲州谷村やむら宝村たからむら大旗おおはた尋常高等小学校へ、深夜こっそり訪れて来た。校長に逢いいと云うのである。
「え、谷村やむら丸三まるさんという店に奉公して居りましたが、のちに、独立して、甲府で呉服屋をはじめました。」
新樹の言葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ヤツが谷中やなか谷村やむらなどのごとく、ヤの一字音に化しているのを見ると、本来は拗音ようおんであったかと思うが、北武蔵から上州辺にかけては、ヤトといって谷戸の二字を宛てている。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
勝山城のあった谷村やむら町は「甲斐絹かいき」の産地として名があります。この絹織物は薄手で密で、つやがありなめらかさがあり、特に裏地には適したものであります。風呂敷にも好まれました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
十分ほど前に出た數臺の鐵道馬車をば大月の町はづれで追ひ越し、今朝九時三十分の汽車でついた人たちを乘せた馬車をば谷村やむらと吉田の中間で追ひ越して、一時間と少しで吉田の町に入つた。
湖水めぐり (旧字旧仮名) / 野上豊一郎(著)
「それから兵馬様、もし何かまた御相談事が出来ましたらば、私は明後日あさってまで馬喰町ばくろちょうの大城屋というのに逗留とうりゅうをしておりますから、甲州谷村やむらのおやじとでもおっしゃっておたずね下さいまし」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ええ、谷村やむらでございます」
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)