謹聴きんちょう)” の例文
こんな聖人に真面目にお礼を云われたら、気の毒になって、赤面しそうなものだが狸も赤シャツも真面目に謹聴きんちょうしているばかりだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
青年の態度からは次第に反抗はんこうの色が消えて、ようやく謹聴きんちょうの様子に変って来る。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
かれは再び横になりて謹聴きんちょうせり。学生は一笑いっしょうしてのちくだんはなしを続けたり。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
教員たちは数列に並んで鳴りを静めて謹聴きんちょうしている。志多見したみという所の校長は県の教育界でも有名な老教員だが、銀のような白いひげをなでながら、切口上きりこうじょうで、義務とでも思っているような質問をした。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
謹聴きんちょうの約束じゃないか。まあ聴き給えよ。見ると赤飯こわめしだ。」
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「その謹聴きんちょうのきんの字は現金のきんの字だろう。」
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)