詞藻しそう)” の例文
詞藻しそうの豊富に対して驚くべき自信を持っていたなら、自分は余す処なく霊廟の柱や扉の彫刻と天井やふすまの絵画の一ツ一ツをここに写生し
霊廟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それらの辻や溝のほとりのものであろう、所々は、柳、桜に染められて、にや、万葉の詞藻しそうを継いで、古今こきんの調べを詠み競う人たちの屋根は、ここにこそあるべきはず——と
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けだし元義は熱情の人なりしを以て婦女に対する愛のおのずか詞藻しそうの上にあらはれしも多かるべく、彼が事実以外の事を歌に詠まざりきといふに思ひ合せても吾妹子の歌は必ず空想のみにもあらざるべし。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
余の貧しき詞藻しそうは幽婉典雅等、既に使ひれたる文字もんじほか、春信が美女を形容する事能はず。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)