くる)” の例文
小菊は松島の死んだ妻で、品子姐さんの姉の芸名だが、お篠おばあさんは、そう言いながら、仏壇の納まっている戸棚の天井うらから、半紙にくるんだものを取り出して来た。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
なるほど、そう言われて気をつけて見ると、誰も誰も皆裸で布団にくるまって、木枕の間から素肌が見えている。私も帯を解いて着物を脱いだ。よほど痒みも少なくてしのぎよい。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
翌朝私が目を覚した時には、周囲まわりの者はいずれももう出払っていたが、私のほかに今一人、向うの部屋で襤褸布団ぼろぶとんくるまっている者があった。それは昨夜ゆうべ遅く帰った白い兵児帯へこおびの男だ。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
野暮くさい束髪頭の黒羅紗くろラシャのコオトにくるまって、天鵞絨ビロードの肩掛けをした、四十二三のでぶでぶした婦人のあから顔が照らし出されていたが、細面ほそおもの、ちょっときりりとした顔立ちの洋服の紳士が
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)