補綴ほてつ)” の例文
旅は読書と同じく他人の経験を聴き、出来るだけ多くの想像をもって、その空隙くうげき補綴ほてつしなければならぬ。
その色々の声が、大津絵を補綴ほてつして行く工合ぐあひは、丁度ちやうどぜの屏風びやうぶでも見る時と、同じやうな心もちだつた。自分は可笑をかしくなつたから、途中であははと笑ひ出した。
京都日記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼は経世的眼孔においては、水野に及ばず。その天下の大機を、平正穏当の間に補綴ほてつし、人をしてそのしかるを覚えずしてしからしむる経世的器度においては、阿部に及ばず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
『凱旋』にも補綴ほてつ上多少の破綻のあるのを発見した。
雨の日に (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
引用文を補綴ほてつしたものに過ぎない。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)