蚕児かいこ)” の例文
また近年、信州および上州地方にて蚕児かいこの失せることがある。それは、オサキの飼い主がオサキをつかって盗ましむるのであると申しておる。
迷信解 (新字新仮名) / 井上円了(著)
彼らは蚕児かいこの家を奪いぬ汝ら彼らの家を奪えや、彼らは蚕児の知恵を笑いぬ汝ら彼らの知恵を讃せよ、すべて彼らの巧みとおもえる知恵を讃せよ、大とおもえるこころを讃せよ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
浅黒かった皮膚の色が、蚕児かいこのような蒼白さをもって、じっと目をつむっている時は、石像のように気高く見えた。髪も短く刈り込まれてあった。先生が睡りに沈んで来ると、みんなは次の室へ引き揚げた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
埼玉県および群馬県にては、もっぱらきつね蚕児かいこを盗むと伝えている。その狐は一種異なりたる獣にして、通常オサキというが、信州にては白狐または管狐くだぎつねと名づけておく。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
この迷信のある地方は養蚕ようさんの最も盛んなる所なれば、オサキが蚕を盗むという騒ぎがときどき起こる。ときによって、一夜のうちに蚕棚の蚕児かいこがいくぶんか失せることがある。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)