藪蕎麦やぶそば)” の例文
旧字:藪蕎麥
名代なだい藪蕎麦やぶそば向畊亭こうこうていはもう跡方もなくなったので、二人は茗荷屋へ午飯を食いにはいった。松吉は酒をのむので、半七も一、二杯附き合った。
半七捕物帳:08 帯取りの池 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
藪蕎麦やぶそばが、天神さんの中にあること、シュークリームが、近くにある事だけを発見して戻ってきた事がある。
大阪を歩く (新字新仮名) / 直木三十五(著)
大道で話をするのが可訝おかしければ、その辺の西洋料理へ、と云っても構わず、鳥居の中には藪蕎麦やぶそばもある。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その狭い横町をずうッと抜けると田圃たんぼに出て、向うがすうっと駒込の方の山手に続きかすかに藪蕎麦やぶそば灯火あかりが残っている。田圃道で車の輪がはまって中々挽けません。
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その家は日本橋ばくろ町の「伊賀正」といって、旅館と料理茶屋を兼ねていたが、その家を小伝馬町のほうへゆき、堀の手前を左へ曲ったところに、二階造りで藪蕎麦やぶそばがあった。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それの通る時刻と前後して隣の下宿の門の開く鈴音がして、やがて窓の下から自分を呼びかける同郷の悪友TとMの声がしたものである。悪友と言っても藪蕎麦やぶそばへ誘うだけの悪友であった。
物売りの声 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それを筆頭として天ぷら屋の大新、同じく天虎、藪蕎麦やぶそば、牛肉屋の古川、鳥屋の大黒屋ぐらいに過ぎず、西側では料理屋の千歳、そば屋の福寿庵、横町へはいって例の天金、西洋料理の清新軒。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)