薬湯くすりゆ)” の例文
旧字:藥湯
何でも薬湯くすりゆとか号するのだそうで、石灰いしばいを溶かし込んだような色に濁っている。もっともただ濁っているのではない。あぶらぎって、重たに濁っている。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
自分の家でタイル張りの浴室にばかり這入りつけているせいか穴蔵へでも入れられたようで、その上丁子ちょうじせんじてあるのが、あかだらけに濁った薬湯くすりゆのような連想を起させるのである。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
薬湯くすりゆに連れて行くにもあまり見苦しいので家人も億劫おっくうがっていたところ、西岡という若い未亡人が来て、自分のらせている塩湯はどうだろうとすすめてくれた。家人のためには渡りに船であった。