薄縁うすべ)” の例文
方丈はうぢやうの室に近い書斎の隅には新らしい薄縁うすべりが一枚あり、その上には虫干しでも始まつたやうに古手紙が何本も並んでゐた。先生は僕にかう言つた。
そこにはもう僕のほかにも薄縁うすべりを張った腰かけの上に何人も腰をおろしていた。しかし一番目立ったのは黒縮緬くろちりめんの羽織をひっかけ、何か雑誌を読んでいる三十四五の女だった。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)