蔦蔓つたかずら)” の例文
家は旧式赤煉瓦れんが造りの天井の高い平屋建で、狭い門口かどぐちや縦長い窓口には蔦蔓つたかずらが一面にまつわり附いていた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一本のうごきが蔦蔓つたかずらにつたわって、やがて数百の幹がざわめくところは、くらい海底の真昆布の林のようである。四人とも、それには幻を見るような気持だった。
人外魔境:01 有尾人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
蔦蔓つたかずらも葉の裏を見上げるように這懸はいかかる。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
警戒のないのを見定めてから蔦蔓つたかずらの一パイに茂り絡んだ煉瓦塀をヒラリと飛越えた。
女坑主 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
他の草木の根をくつがえし、枝葉を枯らして自分のこやしにしてしまう一方、巻付いて来る蔦蔓つたかずらから、皮肉に食い込んで来る寄生植物までも引き受けて、共々に盛んに芽を吹き、枝を延ばし、花を咲かせ
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)