蒼玄あおぐろ)” の例文
深林の中に踏みらした小径がある、晃平は「こりゃ鹿の路だあ」と言って、目もくれずに先へ立って登る、禿木はげきの枯れ切った残骸が、蒼玄あおぐろい針葉樹林の間に、ほの白く見える
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
岩のあるところを目懸けて、すがりつく、倉橋君も、それから少し後れて、高頭君と中村君とが、みんなこの蒼玄あおぐろい波に、沈没したり、浮き上ったりして、つづいて泳いで来た、敢えて泳ぐという
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
薄っぺらに延びている、それは流れているとは見えないのである、暫らく休んでいると、冷たい谷風が、下から吹きあげて、森は魂が入ったように、さやさやと靡いて、蒼玄あおぐろたてがみが這い上って来る
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)