蒸気いき)” の例文
旧字:蒸氣
厚ぼたい衣を著て、頭には水色のきれをかぶっている。その女の前には鍋に何か煮てあり、それから白い蒸気いきが立ち、鍋の下に赤い火の燃えているところが画いてある。
リギ山上の一夜 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
半焼けの器物が無惨に散らばって、黒焦くろこげの木はプスプスと白い蒸気いきを吹いていた。火元は確に台所らしく、放火の跡と思われる様な変った品物は一つも見当らなかった。
琥珀のパイプ (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
ひどい空腹すきはらの処へ、素的に旨味うまそうだから、ふうふう蒸気いきの上る処を、がつがつして、加減なしに、突然いきなり頬張ると、アチチも何もない、吐出せばまだ可いのに、かつえているので、ほとんど本能のいきおい
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)