葭簾張よしずば)” の例文
一通りの話がすんだもんだから、小池さんに一寸ちよつと外へ出てもらつて、駅前の葭簾張よしずばりの下のベンチで、よく/\懇談をした筈だ。
椎の若葉 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
葭簾張よしずばりのスキ間から楽屋が丸見えだもんですから、道庵がのぞき込むというと、そこで在郷の役者連が衣裳、かつらの真最中で、それをお師匠番が周旋する、床山とこやまがかけ廻る
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
夜っぴてあきないをして居るか、宵だけで仕舞って帰るにしても、葭簾張よしずばりの見通しだ。
彼は海へ張り出した葭簾張よしずばりの茶屋の手すりにいつまでも海を眺めつづけた。海は白じろとかがやいた帆かけ船を何艘なんそうも浮かべている。長い煙を空へ引いた二本マストの汽船も浮かべている。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)