茲年ことし)” の例文
さるに茲年ことし四月うづきころ、かの童児わらはかりそめの病に臥しけるが、日をておもくなやみけるを四一いたみかなしませ給うて、四二国府こうふ典薬てんやく四三おもだたしきをまで迎へ給へども
狂ひに狂ひし頑癖もやゝ静まりて、茲年ことし人間生活の五合目の中阪にたゆたひつゝ、そゞろに旧事を追想し、帰心矢の如しと言ひたげなるこの幻境に再遊の心は、この春松島に遊びし時より衷裡ちゆうりを離れず。
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)