苦沙弥くしゃみ)” の例文
「ええ苦沙弥くしゃみじゃ要領を得ないわけで——あの男は私がいっしょに下宿をしている時分から実にえ切らない——そりゃ御困りでございましたろう」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『吾輩は猫である』のなかに描かれている苦沙弥くしゃみ先生夫妻の間柄は、決して陰惨な印象を与えはしない。作者はむしろ苦沙弥夫人をいつくしみながら描いている。
漱石の人物 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
その内で苦沙弥くしゃみ君の裏の中学校の生徒が騒いで乱暴する所をかいて御覧に入ます。(三八、一一、二四)
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「来るんだ。午後一時までに苦沙弥くしゃみうちへ来いと端書はがきを出しておいたから」「人の都合も聞かんで勝手な事をする男だ。寒月を呼んで何をするんだい」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「それは新工夫だね、どうだい苦沙弥くしゃみなどはちと釣って貰っちゃあ、一寸延びたら人間並になるかも知れないぜ」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
名札もろくにはってない古べいの苦沙弥くしゃみ先生のきょは、去年の暮れおしつまって西片町にしかたまちへ引き越された。
僕の昔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
風呂場を出ると、ひやりと吹く秋風が、袖口からすうと這入って、素肌すはだへそのあたりまで吹き抜けた。出臍でべその圭さんは、はっくしょうと大きな苦沙弥くしゃみを無遠慮にやる。
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)