“舵座(かじざ)” の例文
父上はひざから下を水に浸して舵座(かじざ)にすわったまま、じっと君を見つめていた。今まで絶えず君と君の兄上とを見つめていたのだ。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
君の父上は舵座(かじざ)にあぐらをかいて、時々晴雨計を見やりながら、変化のはげしいそのころの天気模様を考えている。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
折り目正しい長めな紺の背広を着た検疫官はボートの舵座(かじざ)に立ち上がって、手欄(てすり)から葉子と一緒に胸から上を乗り出した船長となお戯談(じょうだん)を取りかわした。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
配縄(はいなわ)を投げ終わると、身ぶるいしながら五人の男は、舵座(かじざ)におこされた焜炉(こんろ)の火のまわりに慕い寄って、大きなお櫃(ひつ)から握り飯をわしづかみにつかみ出して食いむさぼる。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)