自来也鞘じらいやざや)” の例文
そのゆるい足音が流れてゆく石畳の道を、目に立つ自来也鞘じらいやざやと、十夜頭巾と、異風な総髪そうはつが、大股に、肩で風を切って行った。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
立ちすくみに、身を構えていた三人が、ふと眼をつけると、庭の一方大樹のかげに、雨を避けつつ見張っている自来也鞘じらいやざや
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自来也鞘じらいやざや下緒さげおをしごいて、一角が性急にそこを出たので、孫兵衛もまた、周馬をすてて梯子はしごを下り、周馬もまた、いやおうなくついて、宿の外へ飛び出した。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いくら一角の自来也鞘じらいやざやや、周馬の風采にひと癖ありとみえても、めッたにそれを破らすものではない。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふと見ると、それは自来也鞘じらいやざやをおびた天堂一角と、総髪の旅川周馬とお十夜孫兵衛なのである。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蜂須賀家はちすかけのお船手ふなて九鬼弥助くきやすけ森啓之助もりけいのすけ。ともう一人は、やや風采が異なって、紺上布こんじょうふ野袴のばかまをつけ、自来也鞘じらいやざやの大小を落した剣客肌の男——阿波本国の原士天堂一角はらしてんどういっかくであった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「承った——」と、やおら自来也鞘じらいやざやを左にひっさげて、巨躯きょくを起こした天堂一角。九鬼弥助、森啓之助を先に立たせて、酔いざましの好場所もあらばと腕をやくして立ち上がった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
後からそれをつけて行った者は軽捷けいしょうな旅いでたちで、まず服装なりのいい武芸者という風采、野袴のばかまを短くはき、熊谷笠くまがいがさをかぶり、腰には長めな大小をさし、それは朱色の自来也鞘じらいやざやであるように見られる。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自来也鞘じらいやざや
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)