脚榻きゃたつ)” の例文
そのね、手水鉢ちょうずばちの前に、おおきな影法師見るように、脚榻きゃたつに腰を掛けて、綿の厚い寝子ねこうずくまってるのが、何だっけ、君が云った、その伝五郎。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これもまた会社の人夫が脚榻きゃたつを担いで一軒一軒点火して回ったが、二十八、九年頃には電灯の世界となって、ガスやランプの街の灯は早くも退却。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
すると、脚榻きゃたつを抱えた点火夫が軒毎に灯を入れてゆく。
昔の店 (新字新仮名) / 原民喜(著)
これもここでのぞみの達せらるるきざしか、と床しい、と明が云って、直ぐにこの戸棚を、卓子テエブルまがいの机に使って、旅硯たびすずりも据えてある。椅子がわりに脚榻きゃたつを置いて。……
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)