背嚢ルツクサツク)” の例文
ある時には、途中で行過ゆきすがつた背嚢ルツクサツクを負うた一人の老翁がまた戻つて来て、私を呼止めて見舞の言葉を云つて呉れたりした。
日本大地震 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
その時、僕は何だかさげすむやうな気持で二人を見つめてやつた。男は痩せて鋭い顔をしてゐる。山のぼりの仕度をして、背嚢ルツクサツクを負つてゐる。女は稍ふとじしで、醜い顔をしてゐる。
接吻 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
白いジヤケツを著て、おなじやうに背嚢ルツクサツクを負つてゐる。この男と女は、これから山越をして、この維也納森林帯の何処かに宿るつもりらしい。ふたりはいつしか谿の向うに見えなくなつた。
接吻 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)