老耄もうろく)” の例文
わしも自分の死期の解らぬまでには老耄もうろくせん、とても長くはあるまいと思う、其処そこで実は少し折入って貴公おまえと相談したいことがあるのじゃ」
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
離れの隠居部屋に居る父親の専左衛門は、六十を越した老人で、何を聞いても応答うけこたえの出来ないほど老耄もうろくしておりました。
「まあまあそんな事おっしゃらずに……こんな老耄もうろくした私一人をたとえお助けなすったってこのしっかりした屋台骨へなんの穴なんか開きますものか……」
死の航海 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
主人「お前までが然ういう老耄もうろくしたことを云いなすっては困るよ、それだからお前がみん彼様あんな道楽者にしたのだ、チビ/\私に隠して遊びの金までお前が遣んなすったのだ」
「決して伯父さんに逆っちゃいけませんよ。もともと変人なのに老耄もうろくしてに帰ってるから直ぐ気に掛けなさる。もうお前は行かない方がいいよ。今休んでいられるから、お前は外へ行ってお遊び、起きると又うるさいから」
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
近頃は少し老耄もうろくして店の方はあまり構わないが、根が忠義一途いちずの男で、又左衛門を自分の子のように思っている。