やつ)” の例文
あをやつれたる直道が顔は可忌いまはしくも白き色に変じ、声は甲高かんだかに細りて、ひざに置ける手頭てさきしきりに震ひぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
母は語るべき事の日頃蓄へたる数々をきて、先づ宮が血色の気遣きづかはしく衰へたる故をなじりぬ。同じ事を夫にさへ問れしを思合せて、彼はさまでに己のやつれたるをおそれつつも
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それも出世して立派になつてゐるのなら、さうも思はないけれど、つまらない風采なりをして、何だか大変やつれて、私もきまりが悪かつたから、能くは見なかつたけれど、気の毒のやうに身窄みすぼらしい様子だつたわ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)