縹致きりょう)” の例文
およしよ、からかうのは。私のようなこんな気の利かないお多福でなしに、縹致きりょうなら気立てなら、どこへ出しても恥かしくないというのを
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
どうせ縹致きりょうなんぞに望みのあるわけアねえんだがね。……その点は我慢するとしても、彼奴やつには気働きというものがちっともありゃしねえ。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
私は別に縹致きりょうといっては、そりゃよくないけれど、十七八から二十ごろまでは皮膚の細かい——お湯などに行って鏡の処に行って自分でもどうしてこう色が白いだろうと
雪の日 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
お勢さん位の年恰好かっこうでこんなに縹致きりょうがよくッて見ると、学問や何かは其方退そっちのけで是非色狂いとか何とかろくな真似はしたがらぬものだけれども、お勢さんはさすがは叔母さんの仕込みだけ有ッて
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
あの通り縹致きりょうはいいし、それに読み書きが好きで、しょっちゅう新聞や小説本ばかりのぞいてるような風だから、幾らか気位が高くなってるんでしょう
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
新吉はちょっといい縹致きりょうである。面長おもながの色白で、鼻筋の通った、口元の優しい男である。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「ほほほ、阿母さんもあまりそれは、安く自分で落し過ぎますよ。可哀そうにお仙ちゃんは、縹致きりょうだって気立てだってあの通り申し分ないんですもの、そりゃ行こうとなさりゃどんなところへでも……」
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)