綜合的そうごうてき)” の例文
あらゆる、自分の心を引き着ける、そんな美しい部分を綜合的そうごうてきに持っている生き物を自分の所有ものにしてしまわなければ、身も世もありはせぬ。
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
後進こうしんが先進を超えて進むのが人世の常であり、これが無くては、世の進歩がある筈はない。綜合的そうごうてきな意味においては、父は子よりもまさるかも知れぬ。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
綜合的そうごうてきに現代精神とはこんなもので、この精神がないものはほとんど文学として通用しないものだと云う事を指摘して事実の上に証明したいのであります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
むしろ意識的に分裂的散乱的に配合せんとすることをねらっていて、いわば彼にあっては、分裂的に配合することが、結果に於て組織的綜合的そうごうてきな総和を生みだすことになっている。
文章の一形式 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
また山水画においては樹木じゅもく台榭だいしゃの部分的検索、並にその完成をたず、もっぱら風景全体の眺望を描かんとしたり。これ綜合的そうごうてきなる法式のもとはなはだ尋常一様の手段を取りたるに過ぎずといふべし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
岡倉さんの時代には総て学校が綜合的そうごうてきに動いていて、彫刻もやれば大工の仕事も見る、鋳金も見学するという風で生徒の為によかったろうと思う。又学科では彫刻の生徒も日本画等をやった。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)
その中で綜合的そうごうてきに出来る人がよくなって来るのだ。
回想録 (新字新仮名) / 高村光太郎(著)