紅蓮洞ぐれんどう)” の例文
彼女が大層他人ひと当りがよくなったという事を聴いたのもかなり前のことで、抱月氏のお通夜つやの晩に、坂本紅蓮洞ぐれんどうの背中を、立ったままひざで突つくものがある。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
時折来訪される人で、あなたをよく知らないで嫌いだといって、あなたの事といえばよく聞きもしないで悪くキメつけるおじいさんが御座います、紅蓮洞ぐれんどうという人です。
平塚明子(らいてう) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
紅蓮洞ぐれんどうの名は名物とされているが、狷介不羈けんかいふき、世をねたぐれさん以前にも、新派劇、女優劇と、何処の芝居の楽屋にも姿を現す、後日の素質は含蓄されていたものと見えて
竹本綾之助 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
居間の前へくると杉戸がぴったりと閉切しめきってあった。室内では死面デスマスクをとっているのであった。次の室にも多くの人がいた。手前の控室のようなところには紅蓮洞ぐれんどう氏がしきりに気焔きえんをあげていた。
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)