竹籬たけがき)” の例文
槿むくげの花の咲いている竹籬たけがきに沿うて左に曲がると、正面に釈迦堂がある。頼家の仏果ぶっか円満を願うがために、母政子まさこの尼が建立こんりゅうしたものであると云う。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
花畠はなばたけむぎの畠、そらまめの花、田境たざかいはんの木をめる遠霞とおがすみ、村の小鮒こぶな逐廻おいまわしている溝川みぞかわ竹籬たけがき薮椿やぶつばきの落ちはららいでいる、小禽ことりのちらつく、何ということも無い田舎路ではあるが
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
竹籬たけがきのあいだや軒下に寂しい火の光りがちらちらひらめいて、黒い人影や白い浴衣が薄暗いなかに動いていた。お時も焙烙ほうろく苧殻おがらを入れて庭の入り口に持ち出した。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まばらな竹籬たけがきの外に立って、お米は息を殺したようなふうで一心に内を覗いていた。いつもは遠慮なしにはいって来るのに、きょうは竹籬を境にして迂闊に庭へ踏み込もうとはしなかった。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)