稲毛いなげ)” の例文
東京から稲毛いなげあたりの海岸へ遊びに出掛けるのに、非常にオックウに考えている人すらある。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
北条遠江守ほうじょうとおとうみのかみむすめで、右大将家の御台所政子みだいどころまさこには妹婿いもうとむこになる稲毛いなげ三郎重成しげなりが、その七月に愛妻を失ったので、悲しみのあまりに髪をって出家して、その月になって亡妻ぼうさい追福ついふくのために
頼朝の最後 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ほかに南には小山田とか稲毛いなげとか、北には秩父ちちぶなどいう豪族が何軒もあって、いざ開墾が始まるとなると、競うて下受権を獲得し、どしどしと次男三男の輩を分家させたのであります。
名字の話 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼女は稲毛いなげ料亭りょうていにある宴会に呼ばれ、夜がふけてから、朋輩ほうばいと車を連ねて、暗い野道を帰って来たこともあったが、波の音が夢心地ゆめごこちの耳に通ったりして、酒の酔いが少しずつ消えて行く頭脳に
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)