磐安ばんあん)” の例文
柏軒の家では九日にせふ春が次男鉄三郎を生んだ。後徳安とくあんと改称し、立嫡りつてきせられて父の後を襲ぎ、磐安ばんあんと云ひ、維新の時に及んでいはほと称した。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
磐安ばんあんさんがわたしを女房にようぼに持つてくれぬかしら」とは、たかのしば/\口にした所であつた。推するに橋わたしは石川であつたかも知れない。当時懐之くわいしの家は富裕であつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
榛軒の弟柏軒はくけん、通称磐安ばんあんは文化七年に生れた。うしなった時、兄は二十六歳、弟は二十歳であった。抽斎は柏軒を愛して、おのれの弟の如くに待遇した。柏軒は狩谷棭斎のむすめたかめとった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)