破目板はめいた)” の例文
しかし三度目の感情が、周作の顔へ閃めいた時、千代千兵衛の構えは全く崩れ、タ、タ、タ、タ、タ、タと崩砂なだれのように、広い道場を破目板はめいたまで、後ろ向きに押されて行った。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ドスン……と階下かいか破目板はめいたをたたきやぶる音がした。つづいて、まどガラスがやぶられた。しかし、一階の窓には、のこらず鎧戸よろいどがつけてある。かんたんには侵入しんにゅうできないだろう。
主税が足をとめ、岡野金右衛門は、破目板はめいたへそっと、耳をあてて、うかがっていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あとから、一同が、屋敷じゅうを探しまわると、喬之助と右近は、車之助を斬ると間もなく引き上げたものらしく、風呂場で手を洗った形跡があって、壁の破目板はめいたに、血で大書してあった。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
主人はまたその反對の家の隅の破目板はめいたの隙間から往來を覗いてゐた。主人は、片目で、見える方の目は出目金のやうに出張つてゐるので、それは隙間から覗くために出來た目のやうに見えた。
天国の記録 (旧字旧仮名) / 下村千秋(著)