石版摺せきばんずり)” の例文
貰ったままで、好くも見ずに袂に入れた名刺である。一寸ちょっと拾って見れば、「栄屋おちゃら」といやな手で書いたのが、石版摺せきばんずりにしてある。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
わたしの眼に映じた新らしき女の生活は、あたかも婦人雑誌の表紙に見る石版摺せきばんずりの彩色画とほとんど撰ぶところなきものであった。
十日の菊 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
山本氏は石版摺せきばんずりの奈翁のやうに、腰にこぶしをあてがつて、ぐつと反身そりみになつて教壇をあちこちした。
これは何も今時出版する石版摺せきばんずりの東京地図を嫌って殊更ことさら昔の木版絵図を慕うというわけではない。