石榴口ざくろぐち)” の例文
朱塗りの漆戸うるしど箔絵はくえを描いた欄間らんまなぞの目につくその石榴口ざくろぐちをくぐり、狭い足がかりの板を踏んで、暗くはあるが、しかし暖かい湯気のこもった浴槽よくそうの中に身を浸した時は
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
長方形の湯槽ゆぶねの上に石榴口ざくろぐちといって、押入じみた形のものがあって、児雷也じらいやとか、国姓爺こくせんやとか、さまざまの絵が濃い絵具でいてあり、朱塗の二、三寸幅の枠が取ってあって
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
その頃の湯風呂には、旧式の石榴口ざくろぐちと云うものがあって、夜などは湯煙ゆげ濛々もうもうとして内は真っ暗。しかもその風呂が高く出来ているので、男女ともに中途の階段を登ってはいる。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
江戸の名ごりのような石榴口ざくろぐちの残った湯屋はこの町からほど遠くないところにある。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)