真土まつち)” の例文
旧字:眞土
下は軟らかい真土まつちで、掘るに大した労力がいるわけでもなく、たちまちの間に一尺五寸ほど掘り下げると、くわほうり出して両手を差し込み、土の中から取り出したのは
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「おのれ、ぬけぬけと口をふいたそのいい訳、たとえ、仮面めんの一事はどうであろうと、金吾にとれば真土まつちの黒髪堂での不覚もある。武士の意気地としても、汝を助けておくわけにはまいらぬ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
玄土くろつち真土まつちならねば水入れて深くぬめるなし早稲田わさだ根づかず
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
それには日本左衛門にも、うなずかれる節がある。真土まつちの上の黒髪堂で、突然、かれが斬りつけてきた抜きうちは諸手もろてをかけてきたのであって——今思えばあの時面箱を持っていた様子はなかった。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ほのぬくみあか真土まつちや追ひぬけて鼠見はなち猫のころぶす
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ぬすいちの晩、真土まつちの黒髪堂の前で日本左衛門のために思わぬおくれをとって気を失なったこと、また、それからお粂の家へ助けられて以来、ふしぎな業病ごうびょうをなやみ通しで今日に至ったまでのことを
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
営庭の老木おいきの桜過ぎにけりわれは立ちつくす光る真土まつち
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)