白波はくは)” の例文
仰ぎ見る大檣たいしょうの上高く戦闘旗は碧空へきくうたたき、煙突のけぶりまっ黒にまき上り、へさきは海をいて白波はくは高く両舷にわきぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
淡路あわじの沖、瀬戸五十町ほどを、波間もみえぬほど、大小数千そうのふねが、一時に、ひがしの一方向へ白波はくはを噛んでゆくさまは、古記録の誇張をしても、なお、およばないほどだったろう。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諏訪一郡の低地は白雲はくうん密塞みっさいして、あたかも白波はくは澎沛ほうはいたる大湖水であった。急ぎに急ぐ予らもしばらくは諦視ていしせざるを得ない。路傍の石によろよろと咲く小白花はすなわち霜に痛める山菊である。
白菊 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
白波はくはをけり、砲門を開きて、咄々とつとつ来たってわれに迫らんとするさまの、さながら悪獣なんどの来たり向こうごとく
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)