疋田ひった)” の例文
庄次郎は、救われたような気持と同時に、疋田ひった鹿の、下町娘と、歩けることが、ふと、もうけもののように、欣しく感じた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大小無数の疋田ひったの鹿の子絞りで埋めてあるだけに、疋田の粒と粒とは、配し合い消し合い、ち合って、量感のヴァイヴレーションを起している。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
お喜代の愛くるしいひとみや、唇や、白いあごを描いて、かすかな水音のする深い闇の底から、あの疋田ひった鹿が、うかび出してくるように、うっとりしていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こちらは、門人鈴木意伯いはくと申す者。——また、これにおるのも、弟子の疋田ひった文五郎でござる」
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おい疋田ひった文五郎と、高弟の鈴木意伯いはくをつれて、今、裏門のほうからそこへ帰って来た。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その間に、疋田ひった文五郎は、暇をもらって、ひとり廻国に出た。後に疋田陰流を創始して、栖雲斎せいうんさいと号し、伊勢守の門を出た者として、また伊勢守のおいとしても、名をはずかしめなかった。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十七、八の下町風で、髪に疋田ひった鹿を、愛くるしく、かけていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)