用捨箱ようしゃばこ)” の例文
老眼鏡の力をたよりにそもそも自分がまだやなぎ風成かぜなりなぞと名乗って狂歌川柳せんりゅう口咏くちずさんでいた頃の草双紙くさぞうしから最近の随筆『用捨箱ようしゃばこ』なぞに至るまで
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
種彦たねひこの『用捨箱ようしゃばこ』巻上に、ある島国にていと暗き夜、鬼の遊行するとて戸外へ出でざる事あり。
かくてあるべきにあらざれば下宿へ還って『用捨箱ようしゃばこ』をひもとくと「鍋取公家なべとりくげというは卑しめていうにはあらず、老懸おいかけを掛けたるをいえるなり、老懸を俗に鍋取また釜取かまとりともいう」
おのおのその名称と詠吟の法則とを異にすといへども、もしこれをある形式の短詩として看来みきたるや、全く同工異形にしてその差別往々おうおう弁じがたきものあり。これ既に柳亭種彦りゅうていたねひこが『用捨箱ようしゃばこ』にいふところ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)