生帳面きちょうめん)” の例文
純一は生帳面きちょうめんな、気の利かない返事をしながら、若し瀬戸の来た時に、お雪さんでもいたら、どんなに冷かされるか、知れたものではないと、気味悪く思った。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
これが第一歩だが君は娘の部屋を見たね、鏡台の抽出ひきだしと机を除いて、余り冷たく生帳面きちょうめんに整理されてあったよ、娘の部屋として不似合にね、箪笥は平素錠を下さない癖らしく一番上の
誘拐者 (新字新仮名) / 山下利三郎(著)
佐野さんが来るのを傍輩がかれこれ云っても、これも生帳面きちょうめん素話すばなしをして帰るに極まっている。
心中 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
家の中の事を生帳面きちょうめんにしたがる末造には、こんな不始末を見ているのが苦痛でならない。しかしこうなった元は分かっていて、自分が悪いのだと思うので、小言を言うわけにも行かない。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)