生命拾いのちびろ)” の例文
安藤対馬の災難は不思議にもその傷が軽くて済んだが、多くの人の同情は生命拾いのちびろいをした老中よりも、現場にたおれた青年たちの上に集まる。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「うむ」と言つたきり、光政はじつと侍医の顔を見詰めてゐたが、暫くすると掌面てのひらの蜜柑をそつと籠のなかへ返した。蜜柑は生命拾いのちびろひをしたのが嬉しさうに、籠から滑り落ちて座敷に転がり出した。
はじめ生命拾いのちびろひをしたことを確めた。
にぎり飯 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「そう言えば、師岡正胤もろおかまさたねもどうしていますかさ。ひょっとすると、わたしより先に京都へ出ているかもしれません。あの師岡も、今度の大赦にあって、生命拾いのちびろいをしたように思っていましょう。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
国会議員は生命拾いのちびろひをしたやうな顔をした。
初て生命拾いのちびろいをしたことを確めた。
にぎり飯 (新字新仮名) / 永井荷風(著)