現世利益げんぜりやく)” の例文
仏法はいまだ漸く現世利益げんぜりやく乃至ないしは迷信の域を脱しない。さもなくば政略の具であった。諸家の仏堂はいたずらに血族のしかばねの上に建立こんりゅうされたかにみえる。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
すると康頼やすよりおこったぞ。ああ云う大嗔恚だいしんいを起すようでは、現世利益げんぜりやくはともかくも、後生往生ごしょうおうじょう覚束おぼつかないものじゃ。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「仏教思想に対する日本人の理解ははなはだ浅薄であった。仏はただ現世利益げんぜりやくのために礼拝せられたに過ぎぬ。言わば仏教は祈祷教きとうきょうとして以上の意味を持たなかった。」
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
薬師如来は、云うまでもなく衆生の病気平癒を本願の一とする如来であるから、ここにはつねに現世利益げんぜりやくの観念が伴う。自分の病を治したいという願いそのものに不純はあるまい。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)