玉乗たまのり)” の例文
沼南夫人のジャラクラした姿態なりふりや極彩色の化粧を一度でも見た人は貞操が足駄あしだ穿いて玉乗たまのりをするよりもあぶなッかしいのを誰でも感ずるだろう。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「うん、そうさ、あの葉村のな。……今こそ玉乗たまのりの親方か何かで、真面目に暮らしているけれど、昔はどうして大悪党よ、俺ら以上の悪党だったのさ」
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
僕が二十になった頃から(すなわち明治三十年頃から)のことならどうやら記憶しているようだ。一番はずれの江川劇場は玉乗たまのりや手品の興行で人に知られていた。
浅草むかしばなし (新字新仮名) / 永井荷風(著)
……これで戻駕籠もどりかごでも思出すか、善玉のかいでも使えば殊勝だけれども、疼痛疼痛いててて、「お京何をする。」……はずんで、脊骨……へ飛上る。浅草の玉乗たまのりに夢中だったのだそうである。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……今晩はだめだぞ、彼は江川えがわ玉乗たまのりの前を歩きながらつぶやいた。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)